Beranda / 恋愛 / お嬢!トゥルーラブ♡スリップ / 【第1部】 第3話 奪われた唇①

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【第1部】 第3話 奪われた唇①

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-21 17:31:56

「僕の名前は、ヘンリー・エドワード・ローレンス。ヘンリーと呼んで」

 彼は可愛い微笑みを向け、平然とそんなことを言ってきた。

 はい? やっぱりこの人変だ。どこかで頭でも打ったのだろうか。

 いや、そもそも風呂から出てきたんだから、人間じゃないのかも。

 宇宙人とか? いや、でも地球人っぽいし。

 まあ、確かに外国人っぽい顔してる。うん。あ、外国人さんはいろんなところから出てこられるとか?

 いや、そんな話聞いたことないよ。

 私の頭の中はプチパニック状態だ。

 呪文のように、落ち着け、と自分に唱えながら、私はヘンリーに笑顔を向けた。

「うん、ヘンリー。あなたはなんでお風呂から出てきたの?」

 そうよ、とりあえずこれ聞かないと始まらないでしょ。

「僕もわからないんだ……。

 お風呂に入っていたんだけど、気づいたらここにいて」

 ヘンリーの頭の上を?マークが飛び交っている。

 どうやら、彼にもわからないらしい。

 もしかして、よく漫画とかでやってるタイムスリップ的なこと?

 だとしたら、違う国からやってきたのも理解できる。時代も超えてる可能性もあるよね。

「あなたはどこからやってきたの?」

 私の質問に、ヘンリーは佇まいを正して答える。

「僕は、イギリスの王子。

 ここはたぶん異国なのかな? 君を見ているとそんな気がするよ」

 私は開いた口が塞がらなかった。

 こんなことって、本当にあるの?

「あなたの時代は? 現代のイギリス、じゃない?」

「うん、違う気がする……。僕の母はヴィク〇リア女王なんだけど、今のこの世界もそう?」

 ヴィク〇リア女王って、めちゃくちゃ前の人じゃなかったっけ?

 なんか世界史に出てきたような気がする。あー、もっと勉強しとくんだった。

「ヴィク〇リア女王は十九世紀中盤から後半に活躍された方です」

 龍が静かに口を挟んできた。

 さっすが、龍。

 私は心の中で、親指を立てる。それを感じ取った龍があきれたような顔をした。

「じゃあ、ヘンリーは百年以上も前のイギリスから、タイムスリップしてきたってこと?」

「へー、今はそんなに未来なんだ」

 驚きつつ、どこか可笑しそうに笑うヘンリー。

 私ほど驚くこともなく、あっさりとこの現実を受け入れたようだった。

 やっぱりこの人、変かも。

 っていうか、何でこんなに日本語うまいの? さっきからめちゃくちゃ普通に受け答えできてるけど!

 私は先ほどから感じていた違和感を率直にぶつけてみる。

「ねえ、何でそんなに日本語上手なの? さっきから普通に話してるけど……」

「え? あーそうだね、何でだろう?」

 ヘンリーは首を捻った。

 どうやら彼自身にもわからないらしい。

 これはあれか、やっぱり漫画的な感じ? こっちの世界にやってきたら話せるようになってた、みたいな……。

 もう何が起こっても驚かないけどさ。風呂の中から出てきたって時点で、もうとんでも話だし。

「まあ、びっくりはしたけど。

 それより、流華に出会えたことの喜びが大きいかな、僕は」

 そう言ってヘンリーはキラキラした瞳で私を見つめる。

 その瞳はなんだか艶っぽくて、今までそんな瞳を向けられたことのない私は戸惑うばかりだ。

 私の目がクルクルと回っている。

「なんだか、流華を見ていると不思議な気持ちになるんだ。

 ほっとして、安心する。あたたかな気持ちに包まれ、それでいて胸が高鳴る。

 こんな気持ち、初めてだよ」

 ヘンリーは私の手を取り、なんとその甲に口づけしてきた!

 一瞬で、龍の殺気が部屋を満たしていくのを感じる。

 私は恐る恐る龍の方へ視線を向けた。

 龍の身体は小刻みに震え、拳をきつく握りしめている。

 どうにか耐えているようだが、いつまでもつかわからない。

「お嬢……その男、どうするつもり……なんですかっ?」

 こめかみに血管を浮かせた龍が、精一杯の作り笑いで私に問いかけてくる。

「うーん……どうするっていっても。行く当てなんて、ないんでしょ?」

 私がヘンリーに尋ねると、彼は迷子の子犬のような瞳を向けてきた。

「うん。どうやって来たのかわからないから、戻ることもできないし。

 この世界で行くところなんてない。君だけが頼りなんだ」

 ウルウルした瞳、しっぽがあれば振っているんじゃないかと思わせる態度で、媚を売ってくるヘンリー。

 私って、捨て猫だの捨て犬だとかに弱かったりするんだよね。

 頼りにされると、放っておけない性格というか。

「お嬢!」

 それを察してか、龍が釘を刺すように吠えた。

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goodnovel comment avatar
憮然野郎
迷子の子犬のように流華をみつめてくるヘンリー、可愛いですね(≧∀≦)...
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